- 2008-07-18 (金) 2:19
- Opinion
貨幣価値は経営と顧客が決める – 起業ポルノ を読んで。題名からして間違ってるんだけど、それは仕方のないこと。言いたいことはそんなに間違っていないし、世間的にはすこぶる正しい。ただ、経済学者はそうは考えない。
誤解して欲しくないけど、元エントリの批判じゃなくて、経済学徒と世間の認識のズレを感じたから、それをつらつらと書こうと思う。分かりにくかったら本当に申し訳ない。僕の力不足だ。
経済学的に言えば、貨幣価値(交換価値)は、経営(売り手)と顧客(買い手)が決めるわけではない。双方の関係性から、必然的に一意に決定されてしまうものだ。
完全競争の元では、売り手も買い手も価格を決定できない。売り手と買い手が自由に価格交渉をして、その結果創発する価格に双方が従う(プレイステイカー)。需要と供給が一致した点で価格が決まるというやつだ。売り手も買い手も、そうやって決まった価格というルールを受け入れて取引をする。
それが嫌なら、独占するなり、生産を限定してプレミアをつけたり、流行モノだ・ブランド物だと宣伝して付加価値をつけたりするしかない。非完全競争・独占の世界でプライスメーカーになる必要がある。
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ところで、モノの価値には二つの側面がある。
- ①交換価値: 市場で交換する際の価値。値段。価格。貨幣価値。
- ②使用価値: 個人が財に対して持つ価値付け。食べたらおいしい。好きな歌だ。
の二つだ(これを言い出したのはマルクスだ。『資本論』の最初のほうで述べられている)。交換する際の価値は経済関係で規定されるけど、モノ自体の価値は個人の判断にゆだねられる。
—それを踏まえてもらって—
①コンテンツの価格(交換価値・貨幣価値)は≒0だ。
(経済学的な分析については改めて説明しない。)
②他方で、個人個人がコンテンツに感じる魅力・欲求・(使用)価値は0ではない。
観たいし、聞きたいし、欲しい。大変魅力的だ。「コンテンツ創造者」は確かに価値を日々生み出している。ただし、現実的には(無制限な複製やP2Pでの交換やらで)コスト0で手に入りうる。だから、交換価値は≒0だ。タダで手に入るのに誰が金を払う?
何回も言うけど、コンテンツの価格は0だ(貨幣ではかれない価値は生み出しているが)。それに値段をつけて売ろうとするのだから、特別なカラクリが要る(※1)。それが著作権による保護だったりするわけだけど、保護は0コストで行われるわけじゃない。消費者全体に本来得られる快楽の一部を我慢してもらって、はじめて保護は実現する。だから、(池田先生のように)消費者余剰(大雑把に消費者の利益と言い換えていい)を最大化しようとすれば、著作権は認めないほうがいい。
というのが、経済学的なジョーク。(※2)
この考えが行き着くところは、ストールマンだ。
みんながタダで知識をシェアすれは、みんなが最高にハッピーになれる。
みんながソフトをオープンソースにしてシェアすれば、人類全体がそれを利用できて最大の幸福を得られる。
著作権はホントはないほうがみんなが幸せ。
作る側は金銭を得ようと思っちゃいけない。
作る人の便益はは、他人のソフト、アイデア、技術をタダで利用できること自体だ。
(音楽に例えよう。音楽を自由に聞いてもらおう。では、音楽を作った人の労苦の代償は?他人の音楽をタダで聴けること。自由にインスパイアされて、自由にパロってもいいこと。聞いてくれた人のフィードバックを得られること。それら全てが代償だ。)
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経済学的に分析する際の価値(交換価値)は、世間一般的に議論になる価値(使用価値)とは次元が違う。だから話が食い違ってしまう。どっちも正しいけど、議論にはならない…。
著作権は法と政治の話題だ。経済学はそれを分析し、批判し、代替案を出せる。でも、選び取るのは法と政治の役割だ。
国民が、本来得られうる最大の効用の一部を犠牲にして、コンテンツを作る人を援助するのはアリだ。経済学はそれを否定しない。公共財という概念もある。経済が万能なら生活保護は要らない。
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ただ、個人的には、その犠牲にタダ乗りしようとする、権利者という皮をかぶった流通業者がいることは納得がいかない。ネット社会では、彼らの役目は終わった。著作権は本来守られるべき人間だけを守ればいい。それはコンテンツクリエイターで、コンテンツホルダーではない。その点ではT-norfさんと一致してると僕は思っている。だから、批判じゃなくて、ズレを感じたってこと。経済学者って正しいけど、へんなこと言ってるよね!ってw
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※1 ネットが普及するまではこんなカラクリは要らなかった。レコードやCDなどのモノを売ればよかったから。でも、いまはデータを売らなきゃいけない。データは作るのにカネがかかるが(みんなもそれに価値を認めてるが)、交換する際の価値は≒0だ。おおぅ…orz
※2 半ば本気な人も要るけど。経済学的に正しくても、世間みんなが納得しなければ、政治的には正しくない(正義ではない)。
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