「自分の思想がどこにマッピングされるか」を知りたくて、その案内地図的な役割を期待して購入してみた。その通り、アメリカ現代思想の案内役として期待にこたえてくれる本だった。
大学時代は「社会科学研究会」という怪しいサークルに入って、みんなでマルクスとか読んでた。あ、サヨクじゃないよ。入学手続きをして、最初に捕まったサークルだから入った。
そのサークルの活動として、2001年だっけかな?、東北大の川本隆史先生(今は東大に移られたらしい)をお招きして、公演をやっていただいた(本書にもちょっとだけ登場する)。その関係で、ロールズ・ノージックは読んだ。そして、当時2回生だった先輩方の論文が、それを叩き台にしてノーベル賞経済学者アマルティア・センの思想を検証しようというものだった。
そんなこともあって、前半部分はすんなり把握。むしろ、もの足りない。ロールズやノージックの思想が実践的なのは、根底に厚生経済学の理論を(ある程度)下敷きにしているからだと思うんだけど、そこの部分は避けられているから。でも、本書の目的からしてそういうのは仕方ない。基本的なキーワードを復習できたのはいいこと。
後半の「差異の政治学」の話題は、もともと興味ないのと、日本ではあまり実感が沸かないのもあって、「そういうのもあるんだ」という把握しかしていないと思う。けれど、取っ掛かりは得たので、これからはそういう話題も耳に引っかかるようになるだろう。そうなってから、また読み返してもいいし、個々の著作にあたってみてもよさそうだ。
そして、最後は、アメリカの思想の壁がちゃんと指摘されている。これまでアメリカはさまざまな人々から構成されており、自由と平等の正義を考える上ではうってつけの"世界の縮図"だった。アメリカの中の差異を問題にしていれば、立派な理論の枠組みを作ることができた。しかし、9・11以降、アメリカとそれ以外のさまざまな"文明"との係わり合いが大きな問題になると、"世界の縮図"としてのアメリカではなく、世界そのものを貫ける思想が必要になった。けれど、まだそれは見つかっていないようだ。
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P.S.
大学に入ったころは、今から思えば「リバタリアン」だった。でも、いろんなことを知って、ちょっと変わったと思う。今でもたまにそういう考えをするし、根底にはあるけど、それだけではないと思うようにもなった。
僕は「自由な交渉(競争)が効率的な資源配分を可能にする」という経済学のドグマを肯定する。けど、自由な交渉(交換)が成り立つためには、基礎となる秩序・信頼が欠かせない。でも、秩序・信頼のもとになる"思想"の分野はちょっと経済学ではカバーが難しい。経済学は実践的な哲学の基礎になるけど、哲学のない経済学もありえない。
サルが交換をしないのは哲学がないからだ。
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