- 2009-02-02 (月) 1:39
- Opinion
雇用問題についてのまとめ…をもとにしたまとめ (1) の続き。
3. 問題は「世代間格差」ではなく「階級闘争」だ
:企業においては、Aという従業員集団がαという労働条件でも集まってくる以上、Bという従業員集団の労働条件がβからβ-に引き下げられたからといって、Aという従業員集団の労働条件をα+に引き上げるインセンティブを有しない。Bという従業員集団の労働条件がβからβ-に引き下げられたことによる余剰は、経営者と株主とで山分けされることになる。したがって、B=中高年正規労働者の労働条件が引き下げられれば、A=若年非正規労働者の労働条件が改善されるというのは、幻想に過ぎない。
僕は1980年生まれなんだけど、「階級闘争」って言われても本当にピンと来ないんだよね。これでも、マルクスは結構読んだんだけど、"疎外"と"物象化"ぐらい抑えておけばいい感じで、"労働価値説"や"搾取"はほぼ否定されたんだし、ましてや"階級闘争"はないって思う。
それはともかく、
中高年正規労働者の労働条件が引き下げられれば、若年非正規労働者の労働条件が改善されるとは限らない
のは正しい。
でも、"だから「世代間格差」じゃなく「階級闘争」だ"というのか?そこの論理の飛躍は、正直わからん。
4. 労組はいまだに問題を「資本家vs労働者」の図式でとらえて「内部留保の分配」を要求しているが、分配がもっとも不公平なのは、これから生まれる子の税・年金負担が現在世代の18倍にものぼる世代間格差だ。
こっちの認識の方が、ずっとシンプルかつ説得力があると思う。ただ、"中年のノン・ワーキング・リッチ"が本当にいるのかは分からない。しかし、それも解雇規制を緩和すれば白日の下に去らされるだろう。競争に負けるのなら納得がいくが、競争の舞台にすら立てないのは鬱屈が溜まる。
「世代」間で行われる「階級闘争」だといえば分かりやすいかなぁ…
(世代間格差問題のキモは、「結婚するのは、何も考えないDQNか中だししちゃってデキた時だけ」問題にあると思うけど、それはまたの機会)
脱線した。話を戻すが、「中高年を切ったとしても、若者が雇われるとは限らない」のは正しいと思う。ただ、「中高年を切らないと、若者が雇われない」のも正しい。これの典型例は「就職氷河期」だ。既存の雇用者を守って、フレッシュな人材の未来を奪った。固定化した雇用形態と、それに起因する新卒信仰は、当時の新卒者の"正規労働市場"への入場を能力の多寡を無視して拒んだ。これは社会的損失だと思うけど。
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5. 長期雇用の利点は、法的に保護されて初めて発揮される
:企業との間で長期雇用契約を結んでも企業の都合で一方的に易々と契約の解除が可能となったのでは、従業員は長期雇用を前提とした行動を取り得なくなり、長期雇用の利点は発揮されないこととなる。
法律は何も保障しない。
"長期雇用"は、高度成長期の産物。つまり、「このまま行け行けどんどん、会社が潰れるなんてありえないから、たまにくる不況でも頑張って長期雇用してやんよ。その代わり、ちゃんと勉強して企業に忠誠を誓う質のいい労働者になってくれろ」ってことだ。でも、低成長+金融不安が何年かおきに襲う世の中では、長期雇用を保証する企業の命のほうが危うい。長期雇用の利点は、会社が存続してこそ発揮される。むしろ、長期雇用という契約を裏切ってきたのはこの15年間あまた潰れた企業のほうだ。
a: 能力プロファイル(ほんとは入ったばかりは役に立たないとかあるけど簡略化)
b: 賃金プロファイル(点線で定年)
そして、簡略化のため X≒Y としておく。
日本の長期雇用の実態は、大雑把に言えば上図のように、若いころは安く、高齢になるほど高く設定されている。
これは、勤続が長いほど熟練が高まるため、人は年々賃金が上がるのを好むため、長期雇用のインセンティブを高めるため…などもろもろの理由があるんだけど、企業がこれを払いきるまでに倒産してしまうかもしれないとなると、高齢労働者はYを守り、若年労働者はXに納得がいかない。
長期雇用は、将来経営のコアとなる社員、伝統工芸など熟練が鍵を握る分野ではこれからも重宝されるだろう。でも、大部分の日本人にとっては、もうおいしくない雇用形態なんじゃないかな。その分、不況期の備えは企業を当てにできず、自己責任の度合いが増えるだろう。
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6. 労働者の所得水準を低下させつつサービス業の労働生産性を高めることはほぼ不可能である
:労働生産性は「付加価値 ÷ 従業員数」で算出され、「付加価値」とは企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値のことをいう。その計算式は統計主体によって異なるが、いずれにせよ、中産階級が崩壊し、労働者階級の経済状態が悪化すると、国内の労働者階級を主たる客層とするサービス業等は、サービスの価格を上昇させることが難しいことはもちろんであって、むしろ価格の下げ圧力が高まることになる。また、サービス業の多くは労働集約的であり、従業員一人あたりの時間あたりのサービス産出量には飛躍的な向上は期待できない。従って、経営者・資本家と労働者との間の所得格差を押し広げつつ、サービス業の労働生産性を高めよと言ってみても、それは無理を強いるものである。
勘違いかな?労働生産性=(労働による)付加価値 ÷ 従業員数賃金 だと思うけど。だから、分母(賃金)を抑えられれば、労働生産性はあがる。だから、"労働者の所得水準を低下させつつサービス業の労働生産性を高めること"は、不可能どころか、安易で手っ取り早い手段である。
多分、一度でも経営にかかわれば分かると思うけど、一番怖いのは資金のショート。やばいと目線が短期的になるんだ。中小企業にとって、ほんとはそこを金融機関にサポートして欲しい。だけど日本の金融機関は、将来性とか実態には興味はなく、帳簿を見てカネが回っているか、過去に事故がないか、担保になる資産があるか、の3点しか見ない。
ほんとは、不況 ⇒ 貯蓄増える ⇒ 銀行の預金が増える ⇒ 貸し出し金利が下がる ⇒ 資金が調達しやすくなる ⇒ 投資が活発になる ⇒ 好況 というプロセスがいかにスムーズに行くかがキモで、単純な資金ショートをしのげれば頑張れる会社は多いと思うけど、今の日本の金融機関ではダメだな…。先に挙げた3点しか見ないのなら、不況のときは金融が大幅に収縮するしかない。その点、アメリカはやりすぎたけど、リスクを取れるから余った金の投資をうまくやるだろう。案外早く立ち直る可能性もある。でも多分、日本はまた「一番最後に不況から立ち直った国」になる。
だいぶ話がずれちゃった。
まぁ、無理じゃないよ。
むしろ、不況なのでサービス残業して、名目賃金を維持しつつ実質賃金を切り下げるのは日常風景(悲しいけど、これが不況なのよね)。実は、これってワークシェアリングなんだよね。賃金を下げて雇用を守る(労働時間は減らないけど!)。けれど、これが正社員の中でもある一部の間でだけで行われている。それを批判したのがのびー先生の"ノン・ワーキング・リッチ批判"だと思う。
7. 需要不足故の不況で、労働者保護を撤廃・削減すれば、不況をさらに促進する
:今回の不況は、生産の効率性に問題があるのではなく、以前より二極分化の進行により内需が衰退していたのに加えて、サブプライムローン問題等で国外の金融機関に問題が生じた結果外需も急激に落ち込んだことによるものであるから、生産の効率性を向上させることは不況の克服には繋がらない。むしろ、そのことにより労働者への配分が低下すれば、さらに内需が冷え込むため、不況はますます悪化することになる。
ふぅ、疲れてきたけど、これで最後か。
サブプライム、クソだよね。アメリカのせいだよね。ちゃんと、それなりのパニッシュは受けてもらいたい。
良く誤解されるけど、"市場主義""自由主義"はルールを破ったり、システムに悪影響を与えた人間には、ちゃんとした処罰が与えられることが前提になっている。何をやってもいい制度ではまったくないんだよ。今回は、その制裁システムを逃れた相対取引の膨張が問題だと思うけど、それを絡め取れるほど法制度が整っていなかった。いわんや、日本をや。
通貨が"金"という足かせを解いてからまだ日は浅く、今回の事件は金融資本主義がどんなものかということについてのいい教訓になった。それをこれからに活かさないといけないと思う。限られたパイを効率よく分けるシステムとしての"市場主義"の利点は否定できないし、これからの低成長時代では、より一層最大限に利用しなきゃいけない。ムダにしておくものなんかないしね。
市場主義は自由と制裁のバランスで成り立つシステムだ。けれど、"結果"に対しては制裁が及ばないことがある。制裁としての手段である法が、おおむね"不遡及"を前提にしている以上、起こってしまったことが規制対象外なら、何もできない。世界中に迷惑かけておきながら、ボーナスを何億ももらうことについては、道義的には非難されても、法的には罰せられないだろう。これはどーしたもんですかね。
また話がずれた。
「需要不足故の不況で、労働者保護を撤廃・削減すれば、不況をさらに促進する」という主張を分解するとこうなる。
- 需要不足を解消せよ
- 労働者保護を削減するな
- 労働者保護の削減は不況を促進する
1は経済学上のメソッドの問題で、できるかどうかはエロい人が議論している。とりあえず立ち入らないでおこう。2は道義的には賛成だけど、多分実際には無理だよね。3はまったくその通りだ。でも、労働者を保護しても不況が進むのは、雇用問題についてのまとめ…をもとにしたまとめ (1) の3番で論じたとおり。好況への期待がないと、不況が進むだけで終わる。
不況 → 好況 へステップアップするためには、好況への期待がないと始まらない。その要素として、「生産性向上」は小さくない役割を占めるはず。今までで"一番弱い反論"だけど、不況脱出の処方箋をかけるほどエロくないんで…すんません。
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面白いのは、ホンダなんかはこの不況下で"電気二輪"を2年で実用化するといっている。こんなのも、不況ならではのことじゃないかな。好況だったら、そのままガソリン車を売ってただろうしね。
Honda、2年後に電動バイクを投入? – www.be-styles.jp
こういう不況ならではのイノベーション、「創造的破壊」を援護射撃する政策とか、僕は期待するなー。ヒトは、なんというか、必要に迫られないと変われないですから。
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daruyanagi
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小倉秀夫

