- 2009-02-25 (水) 22:34
- ぽえむ
最近、面白い話を聞いた。
ドイツの経済技術省の大臣に新しく就任した「von und zu Guttenberg」氏は由緒ある名門の家系の出身で、正式な名前は「Karl Theodor Maria Nikolaus Johann Jacob Philipp Franz Joseph Sylvester Freiherr von und zu Guttenberg」というそうだ。氏が大臣に就任するという話が出始めたころ、Wikipedia の同氏に関するエントリが編集され、名前に「Wilhelm」が付け足され「Karl Theodor Maria Nikolaus Johann Jacob Philipp Wilhelm Franz Joseph Sylvester Freiherr von und zu Guttenberg」に変更された。
大手新聞やインターネットサイト、またTV番組などドイツ内外のメディアはこの Wikipedia のエントリを参照し「Wilhelm」入りの間違った名前を使い氏に関する報道を行ったそうだが、そうこうしているうちに Wikipedia のエントリは再度編集され、名前に「Wilhelm」が含まれるという証拠を求めると共に、元の正しい名前に戻された。この時点で既に多くのメディアが「Wilhelm」入りの名前で記事を報じていたため、ソースを提示するのは容易く、Wikipedia が誤った事実を掲載し「信頼できる情報源」がこれを報じ、それをソースとして誤った事実を「情報源のある事実」として Wikipedia に掲載できるという循環が生まれてしまったとのこと。
ふとしたきっかけで発生したエラー(間違い)が、多くの権威あるメディア(Wikipediaを含む)に孫引きされているうちに、「正しい」と誤認定(誤って権威付け)されてしまったという話。いつのまにか参照チェーン(AをBが、BをCが…以下略…という参照の繋がり)が閉じてしまったことに誰も気付いていなかった。
そんなことは結構よくある話で、たとえば「貨幣」もそうなのじゃないのかな。
貨幣はふとしたきっかけで生まれた。
(…とここでは考えておく。貨幣生誕に関する話はまたおいおい書けると思う。
話がそれた。)
貨幣はふとしたきっかけで生まれた。
貨幣はいろんなもの(殆どあらゆるものといっても良い)と交換できるから便利だ。
経済学ではこれを"流動性が高い"と表現するんだけど。
いろんなものと交換できるものは、手元においておくものとしてはとても便利だ。
腐らないし、いつの間にか減らないし(むしろ増えたりするし?)、それを基準に価値を計ることもできる。
だから、貨幣は需要される。
整理すると……
1. 貨幣はさまざまなモノ≒価値と交換できる。
2. モノ≒価値が欲しければ、貨幣があればよい。
貨幣を持っていればさまざまなモノ=価値にアクセスできる。いろんなモノ=価値にアクセスできるから貨幣は価値がある。貨幣は価値があるから、いろんなモノ=価値と交換できる(…ここでツッコんでよ?)。
価値に関する議論、参照のチェーンが閉じることによって、貨幣は価値を持つ。
(そのことを書いたのが、岩井克人先生の『貨幣論』だったとオボロゲに記憶しているけど、残念ながら記憶していない。どんな風に表現していたっけ……)
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参照チェーンが閉じて、自分が自分の意味を保障・権威付けしたもの、それ(or その一部)が規範・慣習なのではないかと思う。「愛は素晴らしい」「節制は美徳だ」「助け合おう」「エスカレータは右側にたつ」。そういったことの意味は、「本能的なものだ」「経験に裏付けられている」「みんながそうするから」といったことでしかなかなか説明できなかったりする。
まぁ、それはそれでいい。
あえてみんながぶっ壊さず・ほっといても勝手にぶっ壊れず、存続できるモノには案外意味がある、というか有用だったりもするもんだ。
ただ問題は、規範・慣習は有害・無害の区別がない玉石混交としてあること、規範・慣習の正しさは保障されないのにそれを前提としてメタ規範・メタ慣習が構築されることかもしれない。善悪さまざまな言説が互いに参照しあい、意味を保障しあっている。そのなかには、明らかに有害なものが潜んでいる。
僕らは、既存の規範・慣習を参照することで、先人の失敗・教訓を学び取って、人生の近道を驀進している。でも、それに頼りすぎれば、思わぬしっぺ返しを受けるかもしれない。規範・慣習(・法・制度・思考の枠組み・プログラミングフレームワーク……)を利用するのはおおかた善いことだ。ただし、依存してはいけない。常に、独立の気概をもたねばならない。
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