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おいでよ、みんな大好き動物魂

アニマルスピリット
ジョージ・A・アカロフ, ロバート・シラー
東洋経済新報社 ( 2009-05-29 )
ISBN: 9784492313985

率直に感想を言うならば、最初は少し"薄味"に感じられてがっかりした。この本を読んで、「なるほど!」とか思っちゃう人って、かなり悪い意味での"経済学"が病膏肓に入っている。逆に言えば、シロートが読んでもあまり意味がない本なのかもしれない。

つまり、薄味は薄味でも、実は京都の料亭の薄味なのだろう。きっちり最先端のマクロ経済学をやった上で読めば、違う文脈で読めるのかもしれない。

題名はケインズの『一般理論』でも有名な言葉にちなんでいる。この言葉自体は「神の見えざる手」「予定調和」「命がけの跳躍」「自然は飛躍せず」…いろいろ経済学でも有名な言葉あるけど、その中でも3本の指に入るんじゃまいかってぐらい有名な言葉。投資家が負けを承知でバクチを打つ、そんな野生的な意欲のことを言う(なにしろ、投資なんか平均で見りゃ負けが多いのだ、多分)。

(古典的な意味で)合理的な個人なら、既存の産業で儲けの少ないところから儲けの多いところへカネを移すのを、全産業で儲けが均一になるまで続けるだけの話。気まぐれで一か八かでカネを投げ、新規に産業を生み出すことに望みを託すなんてことはしない。アニマルスピリットは、経済をドライブするパワーなのだ。

しかし、本書で言うアニマルスピリットはその意味とはちょっと違うっぽい。筆者は一緒くたにしてるけど…ちょっと強引に思った。本書で言うアニマルスピリットは、もっと広い意味なんだな。

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著者アカロフとシラーは、これまで経済学が閉じこもっていた「経済学的動機」「合理的反応」の世界―図で言うところの第1象限―から異世界へ飛び出そう、という(p.255)。そのためには、人々が持つアニマルスピリットを経済学へ取り込まなければならない。そのツールとしては行動経済学なんかを想定してるみたいだけど、わしはまだ読みが浅いのでよーわからん。理論・モデルだけでなく、居酒屋経済学的な「物語」も重視しようってことなのな。

その鍵となる"アニマルスピリット"として、著者らは以下の5つを考慮する必要があると主張する。(これらの一部は行動経済学の成果だと思う)

安心乗数

経済活動を行ううえでの基礎となる"安心感"も、正負双方へ拡大フィードバックする。好景気を信じることができればそれは大胆さを生むし、みんなの後ろ向きな姿はみんなを不安に陥れる。
⇒不景気の際は、金融・財政政策だけでなく、"安心"も生み出すべき。
政府による目標設定。

公平さ

規範を守ることは経済的意思決定において大きな動機付けになっている。が、一方で今の経済学は規範について中立的過ぎる。

僕はこの話を読んで、メタ規範ゲーム理論などを思い出した。人は規範を内面化しており、規範を守らない人を快く思わない。そればかりか、規範を守らない人には罰をも与えて規範を維持しようとする。(メタ判断ができない古典的)合理人が規範を犯すならば、合理人はそもそも取引の場にすら参加させてもらえない(という罰を受ける)かもしれない。

腐敗・背信

形式的には合法でも悪い動機を持つ経済活動≒背信にも注意を払うべきだ。市場は万能ではない。市場は必要なものを調達してくれない。みんなに必要だと思われているものしか調達してくれない。みんなに必要だと思われているものを不正に作り出すことは可能だ(不正経理、効きもしないガマの油販売w)。S&L、エンロン、サブプライムローン…景気のいいときはみな寛容になり、「赤信号 みんなでわたれば こわくない」を実際にやってしまう。

貨幣錯覚

貨幣は"ヴェール"だろうか?―違う。現実世界で息をしながら"名目"と"実質"の区別をつけるのは至難の業だ。賃金、契約、会計、さまざまな面で人は名目値に振り回される。物価スライド制を採用すればインフレのヴェールは拭い去れるが、だれもそんなことはしたがらない。

※日本の年金にはちゃんと物価スライド制が適応されるよ!…でも、それはインフレの場合だけだけどね。デフレの際は特例法によりスライドを一時中止できる。年金は上がるけど下がらないというわけだ。なにそれwww

物語

むかし『聖なる予言』という、9つの予言を探索するスピリチュアル・アドベンチャー小説があったんだけど、それにも似ているな。ヒトというのは、往々にして自分で作ったドラマの役者だ。好きな野球チームの勝利と自分の仕事の意欲を結びつけたり、国民性と農耕文化を結びつけてあきらめてみたりする。政治家の発言で株価が変動したり、サンデープロジェクトで野村総研のおっさんが適当な株価予想グラフを書いたりする。そして、それを真に受けるヒトがいる。

(以上、個人的な連想・解釈も混じってるから、気をつけて。)

これらは主にケインズ以降20世紀最大の経済学者フリードマンへの批判にも読める。ってか、そうなんだろうな。自由にしたからってよくなるとは限らない。なぜなら、みんなアニマルだから。合理性とはかけ離れたバカばっかりだから。

じゃぁ、どうすればいいの!?って言われたら、著者らにもわかんないんだけどさ。

#本書はあとがきを立ち読みすればいいとおもた。

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