- 2009-06-26 (金) 3:19
- ぽえむ
最近よく聞く"クラウド"。
よく分かるようで、よく分からないようで、それでいて分かるようで、なんとなくスゴい気がする。「buzzword(一見専門用語のように見えるがそうではなく、明確な合意や定義のない用語)」呼ばわりされる一方で、正面から取り組んでいるベンダーからは「そんなことはない、革命的なんだ!」と持ち上げられることもしばしば。いったいどっちが正しいんだろう。
Wikipedia によると、
クラウドコンピューティング(cloud computing)とは、インターネットを基本にした新しいコンピュータの利用形態である。ユーザーはコンピュータ処理を、ネットワーク(通常はインターネット)経由で、サービスとして利用できる。
とされている。時にその理念そのものがクラウドと呼ばれたり、時にクラウドコンピューティングの基盤となるデータセンター+OSをクラウドと呼んだりもするあたりがややこしい(アプリケーションをクラウドに配置する etc)。
でも、基本的には「コンピュータ処理を(ネットワーク経由で)サービスとして利用する」ということに尽きる。
これまでの利用形態では、計算能力と計算機(PC)は不可分だった。パーソナルコンピュータが一般的でない時代も、多くのユーザーが1台の計算機へログインして利用するという点で、それは変わらない。
こういった利用形態では、PCの故障が即計算力の喪失になる。つまり、1台壊れると、その1台は使えなくなり、とても困る。
けれど、クラウドコンピューティングでは計算機と計算力が分離されている。"計算力"という機能が抽象化され、実体としての計算機からは分けられている。ユーザーはネットワークを介して"計算力"を利用するが、計算機そのものを目にすることも意識することもない。たとえ計算機が1台壊れても、1台分の計算力が一時的に失われるだけで、計算力そのものを利用できなくなるわけではない。遅かれ早かれ、裏でコッソリ新しい計算機が追加され、意識せずに計算力が復旧される。
今回は"計算力"を例に挙げたけど、別にオンラインストレージサービスの"データ保存能力"でもいいし、Amazon EC2などで提供される"仮想OS機能"でもなんでもいい。要は"機能"が実体から切り離されて、安定的に供給されていればいい。
僕はクラウドコンピューティングについて1冊読んだわけでもないし、ましてや専門家ではないので、これ以上は分からないが、まぁ、そういうことらしい。
クラウドに必要なのは、
プロトコルが標準化されていること、
機能が十分に需要されていること、
機能のマネージと継続的な供給が可能であること、
ネットワークがオープンであること。
つまり、入り口・出口があって、その経路と出入り方法が明確であることの2点だ。それさえしっかりしていれば、別に計算機世界でなくともクラウド現象は起こりうる。
現に僕たちは歴史的にそれを経験している。労働者という実体と、労働力という機能の分離だ。それを克明に記した書がマルクスの『資本論』だと僕は思う。
まず、労働者が土地から切り離される(※)。これは、労働力を安定的に供給できる基盤になった。次に(とはいえ同時進行的だ)、資本が蓄積され、労働力が安定的に需要されるようになる。
その一方で、手工業が高度化し、"生の人間"そのものから熟練を剥ぎ取り、誰でもいい、猫の手でもいい、単に労働力を需要する基盤が形成される。労働力をやり取りするネットワークが形成されるわけだ。
最後に、両者をつなぐ"貨幣"というプロトコルが標準化される。"貨幣"は便宜的に金銀という実体が利用されるが、その本質は労働力という機能をやりとりする媒介機能にある。
そして、労働者という実体と、労働力という機能の分離に伴う痛みが"疎外"というわけになるのだろうか。労働者は人格全体を売っているつもりだが、資本家(21世紀にもなってこの言葉はないがw)は単にその"労働力"という機能だけを欲している。要は「能書きたれんと、だまって働け、ぼけ!」ということだ。
労働力の抽象化、労働力のクラウド化が起こったその先には、産業革命と爆発的経済成長があった。ならば、コンピューティングのクラウド化の先には何があるのだろうか。とりあえず、単なる言葉だけではないのは確かなように思える。
知らんけどな。
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※
土地と労働者が不可分なのが封建制度の特徴のひとつだ。原初の"生産を重視する経済学(⇔流通を重視する経済学≒重商主義経済学)"は、土地価値説→重農主義→労働価値説と歩んできたが、それはその時々で重視される生産要素を反映している。
その流れで行けば、限界革命は主要な生産要素としての労働力の地位低下、生産要素の希少性の平準化を取り込んだのだと強引に解釈できるような気もしないではない。ゴメンナサイ、あきらかに強引です。

