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経済史も結構面白い。

経済の文明史 (ちくま学芸文庫) 経済の文明史 (ちくま学芸文庫)
原著:Karl Polanyi
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10万年の世界経済史 上 10万年の世界経済史 上
翻訳:久保 恵美子
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たまたま最近この2冊(「10万年」は下巻もあるので3冊)を読んだ。関連があるようなないような。

産業革命を境に、ポランニー的に言うならば「社会に経済が埋め込まれていた」状態から、「経済に社会が埋め込まれた」状態へ逆転してしまう。これは、「10万年」流にいうならば、「マルサス的経済」から現代の経済への移行ということになるんだろう。

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マルサス的経済とは、人口の増加と豊かさの増加が反比例の関係で均衡してしまった状態。かつて人類は、人口が増えると子供を間引きしたり、セックスしなかったり、ウンコの溜まった汚い家に住んで(半ばわざと)ペストに罹ったりして、人口を減らしていた。人口が減ると一人あたりの所得が増え、豊かになった。その豊かさの具合(生活水準)は、実は現代とそう大差のないもので、格差に至ってはマルサス的経済の方が断然少なかった。

もちろん、産業革命が悪だったかというとそんなことはない。産業革命の果実は、土地所有者でも発明家でもなく(現に産業革命の"革命家"たちは貧困の中で死んでいった)、マルクスが非搾取者として描いた「労働者」そのものだった。"マルサスの罠"から解放された労働者は爆発的に増え、技術革新のペースをほぼ真上にも近い斜め上へ捻じ曲げ、(生活水準という意味ではなく、主に商品選択の多様性+その貨幣で計れる範囲での流通量・速度という意味で)豊かになっていった。

そして、人口爆発(+所得爆発)と技術革新もなんらかの相互影響的な関係があるんだろうね。人間を「情報の器」とみてみれば、人口の拡大→情報の器の拡大→技術革新というシナリオは容易に想像できる。しかも、情報は繋がってこそ意味があり、繋がる都度に新しい情報を生む。n個の情報があれば、最大でn*(n-1)個の情報を生みうる(もちろん、逸損、意味のないペアもあるので実際にはもっと少ないだろうけど)。人口爆発こそ、産業革命というカードの裏だったんだな。

「10万年」の論旨(一部自分なりの解釈を加味しまくっているが)は超明快で、おもしろい。けれど、それでも産業革命の謎を全部解き明かしたとは言えないと思うし、「経済史をぶったぎりすぎ」という批判もあるっぽい。

18世紀の所得や出生率などの具体的な経済指標を推定し、産業革命を数量経済史によって再現する本書の議論は、データとしてはおもしろいが、経済学者の論評は批判的なものが多い。特にブルジョア階級の出生率という特殊な(しかも推定による)要因だけでイギリスの優位性を説明する著者の仮説は、この複雑な問題に単純な答を出しすぎている、というGlaeserの批判は当たっていると思う。実際は、上にあげたような原因が複合して起こったのであり、マルサス的な要因はその一つだろう。残念ながら、やはり世界の経済史は1枚の図では語れないのだ。

1枚の図でわかる世界経済史 – 池田信夫 blog

それを差し引いても、読んでおいた方がいいかなーと思う。失礼だけど、マルサスのイメージは「リカードにけちょんけちょんにされたヒト」みたいなものだったけど、『人口論』でもちゃんと読むかなという気になったw

『経済の文明史』の方は論文集で、べつに産業革命のみを扱ったわけではないけれど、会社に本を置き忘れて仕方なく『10万年』と併読していたせいもあって、関係のある章が面白く読めた(逆に、社会主義などに関する章はアクビがでた)。

こっちを読むと、経済システムというものは、むしろ言語システムのような概念上のモノに思える。常態としての経済システムはマルサス的であり、社会の規範に厳重に縛られた(縛られるべき)システムだ。そして、近代経済は、本来「商品」ではない労働、自然、貨幣まで、賃金・地代・利子として、擬制商品として経済に取り込んでしまった。その結果、元来社会の付属物だった経済が、社会を飲み込んでしまった。そして、格差や貧困、犯罪といった矛盾を作り出している。

はてさて、どうなんだろう。

産業革命は格差を増やしたけれど、全体的に見て最下層の人からさらに奪って格差を増やしたのではなく、中流・上流層を豊かにすることで格差を増やしてきたと思う。経済はネットワークなので、参加する人間が多いほどその価値を増すが、ある時点で「繋がっていることが当たり前」とみなされるようになると、必ずしも経済ネットワークで生きたいと望まない人々も巻き込んでしまう。これは別に「先進国の横暴」とか、そんな分かりやすい話ではなくて、誰もしっぽをつかんで止めることのできない法則みたいなものだ。

アフリカなどが貧しいのは、「マルサスの罠」に陥った社会で、出生率だけが以上に改善された結果かもしれない。食べ物やワクチンの原資を寄付することはあっても、アフリカが産業社会(近代経済ネットワーク)に参加することを十分に支援はしていない。その結果、「マルサスの罠」からも抜け出せず、近代経済へも移行できず、飢餓と貧困だけが残る「アフリカの罠」を作り出してしまっているのかもしれない。

結局、格差をなくすにはどうしたらいいのだろう?

よくわかんないけれど、基礎的なネットワークからコツコツと構築していくしかなく、それは外から与えられるものでは決してなく、自生しなくてはあまり意味のないもののような気がする。発生の過程で、次第に心臓や肺が象られていくように。せいぜい先進国にできることは、大事に保育器に入れてあげるとかその程度のことで、いきなり完成した臓器を移植したりするのはかえってコロすことにつながりはしないかと感じる。

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