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協調と疑心暗鬼

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ゲーム理論というと、囚人のジレンマぐらいは知っている人が多いだろう。これは図のように、2人のプレイヤーが協力(C)するほうが裏切る(D)より望ましいのだが、合理的に行動すると両方とも裏切ることがナッシュ均衡になるゲームだ。

このパラドックスは、1回限りのゲームを考えるかぎり避けることができないが、ゲームが無限回くり返されるとすると、避ける方法がある。プレイヤーAが一方的に裏切ることによって得られる一時的利益は3だが、2回目のゲームからは相手のプレイヤーBも頭にきて裏切ると、両方とも利得は1になるから、プレイヤーAの長期的利益は3+1+1+・・・。これに対して両方が協力することによる長期的利益は2+2+2+・・・となり、3回以上ゲームが続くなら協力した方が得になる。

[中級経済学事典] 長期的関係と戦略的行動 – 池田信夫 blog

グラフに描くとわかりやすいのかな。

C-C[左上] の関係を選択しつづける「協調」(青)と、D-D[右下] の関係を選択し続けた「疑心暗鬼」(緑)の場合の利得をプロットしてみた。(ついでに、最初に信頼する"しっぺ返し(基本的に信頼はするが裏切ったら裏切り返す)"と、最初に裏切る"しっぺ返し"が付き合う場合の後者の利得を、「裏切りの応酬」として書いてみた。"北斗の拳"的な世界を表すものとしてはちょうどいいかもしれないなーとか思って。)

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とりあえず、5回までの試行では、まだ重大な意味は見出せない。裏切るだろ、裏切りもありだろjkみたいな。

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2000回。

一時の裏切りに傷ついてひきこもったロビンソンクルーソーが独りでチマチマ"努力"を重ねるより、他人の寝込みを襲って秘功をついたりヒデブーされたりするほうがだいぶましで、さらに二人仲良く頑張る方がもっと実りがいい……のが察せられる。

さらに、1回の試行で(n-1)乗の取引を行うようにしてみた。n人の人間と暮らしている場合、n個の財をやり取りする関係などのことをザックリ考えるのにいいかもしれない。

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意外に大きな差がつくのがわかる。利己的な人間が、一時的打算的にとる協調行動には、思ったより大きな意味があるのが想像つくだろう。

したがってゲームの続く確率δが高く、協力によって得られるレントCが大きい(または裏切りによって得られる利益Dが小さい)ときは、長期的利益が一時的利益を上回るので、協力することが合理的な行動(サブゲーム完全均衡)になる。…戦後の日本で系列関係や長期雇用のような長期的関係が支配的だったのは、この意味で合理的な行動として説明できる。高い成長率が長期にわたって続くと誰もが期待しているときは、一時的にもうけて取引を切られるより互いに辛抱して長期的利益(レント)を得たほうが得であり、若いとき「雑巾がけ」して年をとってから高い年功賃金を得ることが合理的だ。 …したがって長期的関係が成立する上で重要なのは、長期的利益が一時的利益より大きいことだ。

注意としては、やっぱり最初の利得テーブルが仮定にすぎないということ(これは一般化すればいい話だけど)と、取引が無限に続かない、ある終わりがある場合には、最後の回に双方が"裏切り"を選ぶインセンティブが生じるということだ(どうせ二度と来ない客に対してはぼったくる観光地商売なんかはいい例かもしれない。また、もらえないかもしれない年金の支払いをボイコットするのは合理的だ)。あと、現実には完全信頼はありえない(:P 裏切られたり、気まぐれに裏切ってみたり、そういうのも後にいう理由から案外大事だ。

個人の協調的関係は、一定の条件を満たせば"秩序"になりうる。しかし、逆に"秩序"が個人に対してフィードバックを及ぼすことも考えられる。"裏切り"を選ぶプレイヤーを罰したり(村八分、刑法)、"信頼"を選ぶプレイヤーにオマケをしたり(値引き、お中元など贈り物の慣行)する、そういった「規範」が"秩序"を維持するための良い方法になるかもしれない。

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また、最近の行動経済学の成果は、そういった「規範」を受け入れて内面化するメカニズムが、今まで考えられていた以上にディープな部分(脳、神経)に宿っているらしいということを明らかにしている。人間は感情や無意識の領域に、「規範」を膨大な利得計算をバイパスするco-processorを備えているらしい。

その一方、"秩序"もまた、多くのモノが相互連関しているのを忘れてはいけない。ある秩序が変われば、他の秩序も変化を余儀なくされる…かもしれない。知らないうちに秩序たちを取り巻く環境が変わって、秩序のもつ利得テーブルを書き換えるかもしれない。もしそうなれば、既存の慣行(村八分、刑法、値引き、お中元など贈り物)自体が、経済メカニズムの調整過程を妨げるかもしれない。

体感としての"正義"、脳にこびりついた「規範」は、円滑な秩序の運営に役立つ。でも、その一方で、いつの間にか失われた経済的な利得に固執するだけの、単なる厄介爺にもなりうる。そして、その線引きはまず規範よりもメカニズムを理解したうえでの理性によらなければならないんだろうな。…それすらも、完全とは言い難いんだけどさ。

誤って昔のままの利得構造を想定すると、いつまでもゾンビ企業を延命して赤字を垂れ流し、未来のない職場で人生を浪費する結果になる。この変化を「市場原理主義」などと呼んで拒否するのは勝手だが、いくら嫌悪しても、この変化は元に戻すことができない。

[中級経済学事典] 長期的関係と戦略的行動 – 池田信夫 blog

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これ関連の話題に興味はあるけど、片っ苦しい本はイヤならこれでも読んどけばいいかも(この人は信じすぎるとよくないが…w)。

戦略的行動【strategic behavior】

自己の決定が他の経済主体の選択決定にどのような影響をおよぼすかを、あらかじめ読み込んで行う意思決定のこと。とりわけ、自己に有利となる行動をライバルにとらせるべく、ライバルの意思決定に影響を与えようとする行動。

うちのブログでは言葉に困ってメタ判断とか呼んでた時もあったけど、戦略的判断・戦略的行動とでも言っておけばいいのな。これからそうしようw

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