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日本がスウェーデンになるのは50年早い。

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社会福祉大国スウェーデン。税金と社会保険料負担が国内総生産(GDP)の50%という巨大な公共部門を抱え、年金や児童手当、傷病手当などの現金給付を国の事業(社会保険)として行い、全ての国民に平等で良質の生活を保障する社会を実現した。しかし2008年以降の世界経済危機は、スウェーデン・モデルの根幹を揺るがし始めている。福祉大国の「素顔」を現地から報告する。

スウェーデン・モデルは成功か失敗か 福祉大国「素顔」を現地ルポ JBpress(日本ビジネスプレス)

この記事はとても興味深かった。一部のメディアでは盲目的に賞賛されるスウェーデン・モデルにも陰陽があるのが感じられたし、第一生々しかった。


いいところ

  • 学用品は全て学校側が用意 ― 児童は手ぶら通学、遠足などもタダ
  • スウェーデン語教室、大学、大学院修士課程まで学費は全て無料 ― 奨学金、学生ローンも充実
  • 住民への医療サービス提供を国に義務付け ― 医療費は20歳までは全額無料

「低所得者ほど税をきちんと納めれば、それ以上のサービスが返ってくる」
特に女性や学生など、一般的な国では所得にハンディのある層にとってはパラダイス(このコラムの作者自体も"私も夫も学生だったため、極貧に近い層に分類され"ていたので、[かつて一度は]恩恵を受けた層でもある)。
→ では、逆に金持ちはどう思うだろうか。"海外逃避"しようと思うのではないだろうか。

「基本的に生活にカネがかからない国だ」
その分金からは自由でいられるので、"カローシ"するまで働くインセンティブはない。余暇や家族を大事にするといった、お金では計れない価値を重視した生活を送ることができる。
→ その一方で、可処分所得が少ないので、海外旅行など金銭のかかる娯楽にはアクセスしにくいだろう。カネがかからないこと、それはカネと無縁であることでもある。

 

わるいところ

  • 世界同時不況の影響をモロに ― 遠足のバスが徒歩、教科書は使いまわしでボロボロ
  • マイナーな授業に予算がつかず閉講 ― 移民は言語格差から不利に
  • 医者不足 ― 実際に医者に診察してもらうまでは一苦労

"国家と一蓮托生"
筆者は"国民の多くが「(政府ではなく)自分たちが選択したことだから」「自分の将来や子どもに返ってくるものだから」と認識し、不満を感じる人はほとんどいないように見える"というが、ここまで国家との結合が強固だと「わがままが自分の身を滅ぼす」ことに自覚的にならざるを得ないのではないか。自然、教育もそのような方針になっていることだろう。

とくに近年では、破産直前のバルト三国への投資が問題視されているようだ。国民から預かるお金が多くなればなるほど、国はより多く金融上の責任と能力が要求される。もし失敗すれば国全体が一夜にして夕張状態になってしまう。見た目は優雅でハッピーな福祉国家も、水の中では激しく足をかいているのだ。

参考: スウェーデンの経済 (ekonomi) – スウェーデンの今

とはいえ、"「生活インフラ」と「セーフティーネット」をキメ細かく充実させながら、進化を続け"るスタイルは魅力的。一つの選択肢としては全然アリだ、というのが個人的な感想だ。

 

日本はスウェーデンになれるか?

結論から言えば、「無理ではないにしろ、ちょっと先の話」だと思う。理由は3点ほどある。

① 人口ピラミッドの成熟

表面的な近代化&経済成長でいえば日本が上に見えるけど、実はスウェーデンの方が経済的な成熟度は上だ。その一例として人口ピラミッドを挙げられると思う。

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1950年の人口ピラミッド(左: 日本、右:スウェーデン)

日本は典型的なピラミッド型をなしているのに対し、スウェーデンは成熟した国によく見られる紡錘型に近い。つまり、スウェーデンは60年前からあまり人口動態を維持しており、そのためそれに応じた経済を育成してきた。それを日本が一朝一夕にまねできるかと言えば難しいと思う。

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2000年の人口ピラミッド(左: 日本、右:スウェーデン)

日本では今、"孫は祖父より1億円損をする"社会であるらしい。祖父がちゃんと貯金をしてこなかったので、孫が一生懸命祖父を養ってあげているのが今の日本の社会保障だ。これの一面も、日本固有の人口構成の変化に負う部分が多い。とりあえず、この負債を何とかしなければ、持続的な世代間の助け合いは難しいのではないか。

出典: 日中韓・スウェーデンの少子高齢化(2)

 

② "貧しさ"をシェアするコンセンサス

直観的に異議を唱える人も多いだろうけど、一般的に「豊かさと、出生率は反比例の関係にある」。とても単純にしてしまえば、

一人あたりの豊かさ = 国の豊かさ ÷ 国の人口

なので、国の豊かさが一定の場合、一人あたりの豊かさを向上させるには国の人口が減ればよい。逆もまたしかり。微分を採れば、国の人口の増加率、つまり出生率(ここでは死亡率は一定と仮定)が、一人あたりの豊かさの増加率(≒来年給料が増えるか?ってこと!)に反比例する。

今の日本では国の豊かさ(家計でもいい)が近い将来増える気配がない。なので、それを前提にしたうえでよりマシな生活を送りたいならば、あまり子供は多く作らない方がいい。

その状況はスウェーデンでもあまり変わらないはずなのに、彼の国では人口の再生産が比較的うまくいっている。これは、日本とは逆に、一人あたりの豊かさを犠牲しているのではないか…少なくとも金銭的、物質的な。その分、制度やインフラ、人々の意識で補ってはいるだろうけども。

つまり、金銭的、物質的な貧しさを、制度・インフラ・マインドなどをうまく整えて、みんなでシェアする体制がうまく出来上がっているのかもしれない。そんなの、一朝一夕で整えるのは無理だ。

海外旅行も、ブランド物のカバンも要らない ― そういったコンセンサスを徐々に日本全体で確立していかないと、突然の方針変換ではなかなか不満が大きいのではないか。それこそ、50年スパンの政策が重要になる。

 

③ 国のサイズ

スウェーデンの経済規模は日本の1/10。

古くは老子、新しくは組織経済学が明らかにしたように「組織が小さければ小さいほど、制度はうまく維持することができる」。その点、スウェーデンはこれまでみた制度・コンセンサスを維持するのが容易なのだ。

では、日本では無理なのか…と言われれば、そんなこともないと思う。ただし、もっと地方分権化して一つ一つの政府単位がコンパクトにならないとムリだと考える。

スウェーデンは頭のてっぺんから尻尾の先まで寒い国だけど、日本には雪積もる国があれば、常夏の国もある。システムを維持するのは法律や決まり事ではなく、そういった個別事情や突発的な事件に対処できる、もっと生々した機動力を備えたコンパクトな行政組織だと思う。

 

まとめ。

日本がスウェーデン化するのはアリだけど、それは50年先の話。とりあえず僕らができることは、コンパクトで機動力のある風通しのいい政府へ改革して、孫に選択権を残してあげることだ。あとは、やつらが選べばいい。

俺たちはその50年間我慢我慢ですよ\(^o^)/


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