- 2009-12-27 (日) 20:11
- Review
本書を読み終えて、訳者あとがきまでたどり着くまでに、2か月かかった。10月11月はほとんどこの本にかかりきりだった。にもかかわらず、理解できたかといえばとても心もとない。大学であれば、輪読仲間とかも探せたのだろうけど……
唯一の救いだったのが、どーやら本書を理解できないのが自分の頭のせいではなく、もともと難解であるせいらしいということ。訳者のあとがきでそう書いてあって、あぁ…と肩の荷が下りた。
僕の場合、マキャベリは全部読んでいて、ハリントンはWebでいろいろPDFの論文をコピーして通読、原著は知らないがとりあえず全体像は把握したかな、というレベルだったのだけど、どうやらそれでは全く通用しなかったようだ。途中、アリストテレスの思想から、イギリスの議会史、アメリカの揺籃期について、寄り道に歯噛みしながらも復習せざるを得なかった。
気が付いたら、ブックカバーは破れまくってすでにその責を果たさず、ページは折り目ばかりという状態。『資本論』以来の苦戦だったけど、たまにはいい経験だったかな、と思う。
内容についてはおいおいブログに綴ることがあるかもしれない。というか、どこかWebの隅っこに共和主義に関する個人用のWikiでも立てて自学し、経済(商業)と政治(武力、公共)についてじっくり考えたいという意思が芽生えてきた。日本には共和主義の精神が決定的にかけていると思うので。
第一部 個別性と時間
概念的背景
第1章 問題とその様式
(A) 経験、慣用、慎慮
第2章 問題とその様式
(B) 摂理、運命、徳
第3章 問題とその様式
(C) <活動的生活>と<市民的生活>
第二部 共和国とその運命
一四九四年から一五三〇年までのフィレンツェの政治思想
第4章 ブルーニからサヴォナローラまで
運命、ヴェネツィア、黙示録
第5章 メディチ家の復辟
(A) グイッチャルディーニと下級の<都市貴族層>、一五一二―一五一六
第6章 メディチ家の復辟
(B) マキァヴェッリの『君主論』
第7章 ローマトヴェネツィア
(A) マキァヴェッリの『ディスコルシ』と『戦争の技術』
第8章 ローマトヴェネツィア
(B) グイッチャルディーニの『対話』と貴族的慎慮の問題
第9章 ジャンノッティとコンタリーニ
概念としてのヴェネツィアと神話としてのヴェネツィア
第三部 革命以前の大西洋圏における価値と歴史
第10章 イングランド・マキァヴェリズムの問題
内乱以前の市民的意識の様式
第11章 共和国のイングランド化
(A) 混合政体、聖徒、市民
第12章 共和国のイングランド化
(B) コート、カントリ、常備軍
第13章 新マキャヴェッリ的政治経済学
土地、商業、信用をめぐるオーガスタン時代の論争
第14章 一八世紀の論争
徳、情念、商業
第15章 徳のアメリカ化
腐敗、国制、辺境
そのほか、第四部として「『マキャヴェリアン・モーメント』をめぐる論争を回顧して」に2章が加えられている。
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「マキァヴェリアン・モーメント」という語句は、以下の二通りに解されねばならない。第一に、マキァヴェリの思想が出現した時と仕方を表す。…第二に、「マキァヴェリアン・モーメント」は問題そのものを指し示す。それは(そもそも不安定なものとしての)共和国を、非合理な出来事の流れ("運命")の中で、道徳的、政治的に安定し続けようとする試み("徳")るものとして理解される、概念化された時間におけるモーメント"問題・契機"の名称である。(序文、筆者による省略・注あり)
"運命"(おもに外的な[時に内生された]不条理)、"徳"("運命"に抗して自分と国家を統治する力)、"腐敗"(無関心や欲望の発散、堕落により国家統治能力を損なうこと)は共和主義を考えるために開発されてきた言語だが、その内容は歴史的なコンテキストにより徐々に変質している。
たとえば、"運命"という言葉は、天変地異、蛮族の襲来、他国の侵略といった意味に加え、中世においては神が定めたこと、君主の権威、17世紀以降では、商業的信用、受け継がれた所有権、階級という意味も帯びてきた。自然、それと立ち向かう"徳"の基礎(農本戦士、都市貴族、資本家)も、あり方(慎慮、闘争、革命、自己支配、能力を発揮すること、私益の公益化)も変わってきたし、なにを"腐敗"とみなすかも、中身と範囲の双方で変質した。
特に僕が注目するのは、"運命" vs "徳" という図式が近世以降は大きく崩れ、商業共和国においては、むしろ "徳"の発揮が"腐敗"を招いてしまうという点だ。これに対して近代経済学は"徳"をおおむね肯定しつつも、"腐敗"に陥る条件、陥らないための条件を模索してきた。要するは新自由主義、リバタリアニズム的な文脈だと思うのだけど、それについてももっと実質的に考えていけたらいいなと思っている。


