- 2010-02-26 (金) 22:01
- Review
酒見賢一の短編集。表題の『分解』は、45口径のガバメント(ハンドガン)を分解するさまなどを説明しただけのモノ。ただそれだけなのに、妙に"純文学"(?)へ仕上がっているのはとても面白いなーと思った。
個人的に気に入ったのは、『エピクテトス』『童貞』の二編。
『エピクテトス』は、帝政ローマ期のストア派哲学者エピクテトスの生きざまを描いた作品。彼は奴隷としてローマへ売られ悲惨な生活を送る。しかし、彼の「ストア派的態度(非人情: アパティア)」が、逆に彼を痛めつける人間を精神的に追い詰めていく(彼自身の意図には反して!)。最後、彼は猜疑心に取りつかれた暴君ドミティアヌス[1] に呼び出され、刑殺されそうになる。
「ドミティアヌス帝は理非直曲など構わずにお前を罪に落し、殺すだろう。エピクテトス、逃げるかね?」
「行きましょう」
「死ぬぜ?」
「私の力の及ばないものは、私にとっては何事でもないのです。ドミティアヌス帝は善でも悪でもない。重要なのは私の魂です」
「それがお前の結論か」
「少なくとも私はそう騙されていたい」
『童貞』は、…ネタバレすると面白くないからあまり言わない。人間の歴史がまた神話の世界へ片足つっこんでいる時代に、一人の男が、そして男という性が「父性」を獲得するお話。
『ピュタゴラスの旅』も面白かったよ。
- 彼が本当に暴君であったかはよく吟味する必要がある (*)
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